SIerとは?SEとの違いや業界の事情をやさしく紹介!
SIerとは「システムを構築する会社のこと」です。
ただし、IT業界を希望する就活生や転職者は、次のような疑問をお持ちではないでしょうか?
- SIerとSEの違いはなに?
- SIerでおすすめはどこ?
- SIerランキングを知りたい
- SIerの将来性はどうなの?
この記事では上記のような「もっとSIerについて知りたい!」という方に、SIerの業界について紹介していきます。
具体的には、次のポイントを紹介していきます。
- 仕事内容
- SIerとSEの違い
- SIerの市場
- SIerの種類と大手SIerランキング
- SIerの問題・課題
実際にSI業界に7年いた経験をもとに紹介していきますのでSIer業界のリアルな事情が見えてくるでしょう。
知識がない方に向けて紹介していきますので、ぜひ最後までお読みください。
- SIerとはシステム構築する会社のこと
- SIerの仕事内容はシステムを導入すること
- SIerとSEの違いは「会社」と「人」の違い
- SIの市場は1.7%の成長産業でSEの需要も続く!
- SIerの種類と大手SIerランキング
- SIerの問題
- まとめ
SIerとはシステム構築する会社のこと
SIerとは、別名「SI企業」とも呼ばれます。
「SI」とは、「システムインテグレーター(System Integrator)」の略語で、日本語にすると「システムを統合する人」の意味合いとなります。
つまりSIerはシステム構築から導入のすべてを請け負う事業者のこととなります。
ちなみにSIerの読み方は「エスアイアー」となり、和製英語ですので日本特有の表現となります。
SIerの仕事内容はシステムを導入すること
SIerの仕事は、企業が求めるシステムを導入(運用に載せる)する仕事です。
一行でシステムを導入と記載しましたが、実際にはかなり多くの作業が発生します。
具体的には次の工程があります。
- 業務内容の分析
- 改善案の提案などのコンサルティング
- システムの設計
- プログラム開発
- ハードウェアの選定・調達・設置
- ミドルウェア(OS、データベースなどのソフトウェア)の選定・調達・設置
- システムの導入サポート(計画作成、マニュアル作成、現場サポート)
- 導入したシステムの管理、トラブル対応、QA対応
これらすべてを1社で完結することもあれば、SIerが他社へ仕事を依頼することもあります。
連携する企業は、ハードウェアメーカー、ソフトウェア会社、プログラミング開発会社、通信キャリアです。
どれくらい他社に依頼するかは、SIerの規模とプロジェクトの大きさに大きく影響を受けます。
もし、SIerへの就職を考えているかたは、次の点に気をつけてください。
- SIerの規模
- プロジェクトの大きさ
- 仕事内容 のバランス
くわしくは「SIerとSEの違いは「会社」と「人」の違い」で紹介しますが、最悪、自分のしたい仕事ができない場合があります。
特に、「プログラム開発」については多くの手間暇がかかるためSIerが他社に依頼するケースが多いです。
大きなプロジェクトになると、複数の会社に依頼しないとプログラム開発が終わらないため、「多重の下請け構造」が発生しよく問題視されています。
こちらについては「下請け構造(ITゼネコン)」で詳しく紹介します。
ところでよく聞く「SIer」と「SE」はどのように違うのでしょうか。
意味合いが違うため、ただしく業界を理解するためにも違いを紹介していきます。
SIerとSEの違いは「会社」と「人」の違い
SIerは企業が求めるシステム構築から導入のすべてを請け負う事業者のことでした。
SEはどういう意味でしょうか?
SIerは事業者(会社)であることに対し、SEは「人」であることが最大の違いです。
つまりSEはシステム構築して導入するまでの一連の作業を行う人です。
注意すべき点としては、「SIerの規模」「プロジェクトの大きさ」によって同じSEでも仕事内容が大きく違います。
その傾向を表にまとめました。
企業規模 | プロジェクト規模 | SEの仕事内容 |
---|---|---|
大手Sier | 大規模 | 業務分析、コンサルティング、下請けの発注と受入作業、プロジェクトマネジメント |
小規模 | (なし) | |
中堅Sier | 大規模 | 大手Sierの下請け作業 |
小規模 | 全作業 | |
零細Sier | 大規模 | 中堅Sierの下請け作業 |
小規模 | 全作業 |
重要なポイントは次の点です。
- 大手SIerでは下請けに発注+プロジェクトマネジメントが中心となり、開発スキルは身につきにくい
- 中堅SIerまたは零細企業の大規模プロジェクトでは下請けになることが多く、下流作業が多い
開発がしたいという方が大手SIerに入社する場合は事前に確認しましょう。
実際に開発ができず退職する事例は多く聞きます。
ちなみにSEとプログラマの違いもよく聞かれます。気になる方は合わせてご確認ください。
次ではSIerの市場規模を紹介します。
SIの市場は1.7%の成長産業でSEの需要も続く!
SIerの市場は成長しているのでしょうか?それとも成熟しているのでしょうか?
IDC Japanの調査によるとSIとITアウトソーシングの市場は5兆円〜6兆円の規模となっています。
また、約1.7%の成長が続くと見られています。
ちなみに他の市場と比較すると、次のようになります。
- 自動車関連:63兆円
- 電気通信:14兆円
- 鉄道:6.8兆円
- SIer:5〜6兆円
- 放送業界:約3.9兆円
これまでは、マイナンバー制度によるシステム案件や金融システムの統合・更新など大型案件が市場を支えてきましたが、今後は ・クラウド ・ビッグデータの収集・分析・活用 ・Iot ・デジタルトランスフォーメーション の投資案件が市場を支えると見られ、IT業界はよりおもしろくなっていくでしょう。
引き続き、人材は不足しているため、SEの需要は当分続くと考えられます。
SIerの種類と大手SIerランキング
SIerは規模も様々ですが、企業の成り立ちから分類分けがよくされます。
一般的な分類は次のように別れます。
- ユーザー系
- メーカー系
- 独立系
- コンサル系
- 外資系
これらの違いは企業の成り立ちや企業名を見ると理解しやすいでしょう。
次の表にまとめました。
Sierの分類 | 成り立ち | 代表的な企業名 |
---|---|---|
ユーザー系 | 企業の社内情報システム部門から分離・独立 | NTTデータ、新日鉄ソリューションズなど |
メーカー系 | サーバーやPCのハードウェアメーカーのソフトウェア部門が分離・独立 | NEC、富士通、日立関連の子会社 |
独立系 | 特定の親会社を持たず、独自にSierとして成り立った会社 | 大塚商会、CSK、富士ソフトABC |
コンサル系 | 技術中心ではなく、経営戦略に主眼をおいている超上流が得意なSier | 野村総合研究所、アクセンチュア、日本総合研究所 |
外資系 | グローバルな市場で活躍しているSier | Oracle、SAP、アクセンチュア |
参考:SI業界とは? | NTTデータを知る | NTTデータ新卒採用サイト
参考:Sierとは - はてなキーワード
具体的な企業を知りたい方、売上・利益・年収などの比較をしたい方はSIerをランキング化した記事がありますので合わせてご覧ください。
さいごにSIer業界の問題・課題を見ていきましょう。
残業や過労、うつ病などよく聞くSI業界ですが、実情はいかがでしょうか。
SIerの問題
よくうつ病や過労死の職種として代表となるSE。
SIer業界はブラックなのでしょうか?
7年SIerに努めた筆者がSIerのリアルな問題を紹介していきます。 SIerの問題はよく次の点が紹介されます。
- SIerは3Kではなく7K?
- SIerは成果主義ではなく、年功序列
- 下請け構造(ITゼネコン)
- 人材不足
- SIerというビジネスそのものに対する問題
それぞれ紹介していきます。
SIerは3Kではなく7K?ブラック企業より怖いブラック上司
過労死やうつ病の社会問題を特集するたびにでてくるSE。
本当に過酷なのでしょうか?
最近では劣悪な労働環境を3Kで表現しきれず、7Kとも言われるようです。
- きつい
- 帰れない
- 給料が安い
- 規則が厳しい
- 休暇が取れない
- 化粧がのらない
- 結婚ができない
実際はどうでしょうか。
私の意見は「SIerはすべて7Kではない」です。
事実、私の所属ではまったく7Kに該当しませんでした。
一部のSIerでは無理な長時間労働や徹夜などがあるのはテレビからときどき耳にしますが、一部の行き過ぎた会社に感じます。
一方で、部署が違う同僚では
- 帰れない
- 休暇が取れない
など聞いたことがあります。
同じ会社にもかかわらず、上司が違うだけで過酷な環境となりうるのです。
そのため、よくブラック企業と言われますが、「ブラック上司」でないかも大事です。
気になる方は面接時に社員の帰宅時間について確認してみましょう。
SIerは成果主義ではなく、年功序列
IT業界は新しい制度で、能力さえあれば給与も大きく上がる成果主義と思う方は多いのではないでしょうか。
実際はほんとうの成果主義は一部の企業で、ほとんどの場合、年功序列となっています。
SIerは定年退職者がいるくらい歴史がある会社もあります。
キャリアがわかりやすい反面、成果主義に夢をみないほうが良いでしょう。
成果主義ではないといってもSEの年収は、他の業種と比べ高い方となります。
気になる方はこちらの記事も参考にしてください。
下請け構造(ITゼネコン)
SIerの業界人がよく問題にするのがSIerの「下請け構造」についてです。
下請け構造といえば建設業界のゼネコンが有名なため、「ITゼネコン」とも呼ばれます。
イメージとしては次のようになります。
大型案件は大手SIerが受注したあと、中堅SIerに下請けとして発注します。
受注した中堅SIerは、零細SIerや派遣に発注するため、多重の発注構造となります。
発注元が仕様やスケジュール、仕様を決めてしまうため、下請けや孫請けのSIerは次のような問題がでてきます。
- お客様の顔が見えないため、やりがいを感じにくい
- すでに決まったスケジュール内に決まった仕様のプログラムを納品する必要があるためリスクが高い
- 下請けに発注するたびにマージンが引かれ、薄利となる
そのためSIer業界で働く人は、
- 開発がしたい
- プロジェクトマネジメントがしたい
- お客様と一緒に仕事がしたい
といったように、どのようなお仕事をしたいかをよく考え、SIer選びをしましょう。
よくわからない方は転職エージェントがおすすめです。あなたの要望に合わせて企業を紹介してもらえます。
おすすめはIT専門の転職エージェントである「レバテックキャリア」と全国の求人情報を網羅している「DODA」です。
- レバテックキャリア
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人材不足
IT業界は10年以上も人材不足に悩まされている業界です。
競争力がないSIerは優秀な人材も集まりにくいため無理なプロジェクトを請け、負のサイクルを描くでしょう。
SIerというビジネスそのものに対する問題
IT業界は働く環境や制度などが先進的というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
Googleやサイバーエージェント、DeNAなどよく聞くIT企業は華やかで新しい取り組みのニュースを良く聞きます。
ただし、SIerは残念ながら別です。
SIerはSEの働く時間に比例して売上があがる「労働集約型」のビジネスモデルだからです。
そのため、クリエイティブに挑戦する時間もほとんどありません。
アメリカでは企業が直接ITエンジニアを雇うため、日本のようにシステムを外注する文化ではないようです。
気になる方は企業の情報システム部門(社内SE)も検討してみましょう。 社内SEの参考記事はこちらです。
まとめ
この記事では7年ほどSIerに関わった筆者が
- SIerの意味
- 仕事内容
- SIerとSEとの違い
といった基本的なことから
- SIerの市場
- 種類
- 課題
などを紹介してきました。
この記事からSIerのリアルな状況が分かったきたのではないでしょうか?
SIer業界に興味を持つきっかけとなれば幸いです。
以上、SIerとは?SEとの違いや業界の事情をやさしく紹介!でした。
すでにSEの方で転職を検討している人は下記の記事もおすすめです。
もっとIT業界全体について知りたい方はこちらも要チェックです。